
高橋和希の漫画『遊戯王』の文庫版を一気読みしました。文庫になった際に読みたくなって購入したのですが、改めて読んでも面白かったです。
元々はあらゆるゲームを扱っていたんですが、カードゲームを題材にした途端、人気が爆発して、作品の内容もカードバトルが主流になりました。今も形を変えてカードゲーム関係は売られているようですので、凄く息の長い作品と言えます。
何が人気になるか、分岐点になるか、わからないもんですね。作者も連載当初からカードバトルを描く構想ではなかったようですから、読者の人気が創り上げた作品とも言えるかも知れません。
以下、こんな所が良い悪いを列挙します。
・正義(主人公)は勝つという前提の基、如何に話を盛り上げるか。遊戯王はそれが結構上手い(主人公が表裏二つの顔を持っているので、そのトリック的な切り抜け方など)。そういう意味では、主人公以外のバトルの使い方も上手くて、勝ち負けをハッキリさせにくいので効果的だと思う。
水島新司の『ドカベン』なんかはそれがダメ。山田達がほぼ絶対勝つのがわかりきっている分の面白さをどう出すかが下手だと思う。
・第1話を大事にしている。その良い場面が何度も回想で出てくる。
・親友・城之内が友情に篤いところがいい。ベタなんだけど友情の絆を強調する場面はいいですね。そういう意味ではラスト周辺、もう少し活躍させて欲しかったです。
・イリュージョニスト(腹話術師)のようなコピー系の相手を使うのは、知っているキャラとの回想を盛り込めるので上手いと思う。
・意外とカードゲームについては、キン肉マン的(車田正美的)トンデモ発想も多い(敵の城が落下して勝利とか、カードが○○の能力を持っているとか)。そこら辺がまたウケる理由か?奇想天外であればある程、受けるというのも一理ある。
・あと、私の読んだ文庫版、作者の後書きが付いていて、制作の裏側なんかが知られて興味深かったです。「本当は○○したかった」とか、「こういう案もあった」とか、これだけの作品でも作者が悩みつつ作っていたのが窺えて、共感を覚えました。
惜しむらくは、この作者、本作以後漫画を描いてないんですよね。これだけ才能あるんですから、自分の作品を新たに生み出して欲しいですね。財産は充分にあるんでしょうし、連載終了間際に吐血したくらいだから、週刊連載なんかは嫌気がさしているのかな……